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帚木蓬生著『三たびの海峡』は、戦時下、九州の炭鉱に強制連行された朝鮮人・河時根を主人公にした作品。1995年にはこれを原作とする映画も作られました。炭鉱からの逃亡し朝鮮人集住地で暮らすようになった河と日本人女性との恋愛、その後の別離という戦時下の話と、さらに韓国で暮らしていた河が、数十年ぶりに日本の連行先の土地を訪れての話が描かれています。作品から読み取れる、日本の加害の歴史に向き合い、韓国・朝鮮の人びととの友好を築こうというメッセージは、今日の日本でますます重要になっていると思われます。また、炭鉱労働の過酷な実態や、朝鮮人集住地、そこでの暮らしの描写は、その時代の実状をリアルに伝える描写を含むこの作品は、過去の記憶の記録、継承に携わる者にとって、大いに参考になるものです。
このたび、著者である帚木蓬生氏を東京大学駒場キャンパスにお招きし、ご自身にこの作品の執筆についてご講演をいただきます。多くの学生、教職員、一般市民のご参加を呼びかけたいと思います。 |